成年後見制度|鎌倉市大船地区および横浜市栄区の行政書士事務所

成年後見制度

成年後見制度

成年後見制度は、2000年にスタートして、すでに15年を超える歴史がありますが、まだ一般に普及しているとは言い難い状況です。ここでは、成年後見制度について理解を深めていただくため、その概要について簡単に説明致します。実際に成年後見制度を利用しようとすると、分からないことが多々あると思いますので、そのような時はお気軽にお問い合わせ下さい。
なお、ここでは成年後見制度について皆様に分かりやすく解説することを目的としていますので、多少正確性を欠く表現をしたり、詳しい説明を省略したりしているところがありますのでご了承下さい。

成年後見

1. 成年後見制度とは?

認知症、知的障害、精神障害等によって、預貯金等の管理や介護サービスの利用契約等を自分で行うことが難しい方の代わりに、後見人等が代行してくれる制度です。
預貯金等の管理のことを「財産管理」、介護サービスの利用契約等のことを「身上監護」と言います。成年後見人等は、財産管理と身上監護を行います。
成年後見制度には、今までの民法の制度を改めた「法定後見制度」と、自分の意思であらかじめ、任意後見人となる人を決めて契約しておく、新しい「任意後見制度」があります。

成年後見制度の基本理念は以下の3つです。

① 自己決定の尊重

本人の代理をするにあたっては、本人の意思を尊重しなければなりません。
これを「自己決定の尊重」と言います。

② 残存能力の活用

認知症等何らかの障害がある方が、自分らしく生活を送るためには、その方の持っている能力を上手に活用する必要があります。
これを 「残存能力の活用」と言います。

③ ノーマライゼーション

障害があっても健常者と同じように生活できるような社会を作る必要があります。これを「ノーマライゼーション」と言います。

成年後見制度の対象者は、次のような障害のため生活に不自由な方です。

① 認知症の方

アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症等です。

② 知的障害の方

ダウン症、自開症等です。ここで注意していただきたいことは、これらの障害がある方の全員が該当するわけではないということです。これらの障害があるかたのうち知的障害がある方のみが該当するということです。

③ 精神障害の方

統合失調症、双極性障害(躁鬱病)等です。

④ 高次機能障害の方

主に脳の損傷による障害です。

この制度でできないこと

①本人がする日用品の購入への同意や取り消しはできません。
②食事や排泄等の介助、病院への送迎や付き添い等の事実行為はできません。
③インフルエンザ予防接種や手術等の医療行為への同意はできません。
④身元保証人、身元引受人、入院保証人等にはなれません。
⑤住む場所の指定はできません。
⑥結婚や離婚の同意や取り消しはできません。

2. 法定後見制度とは?

法定後見制度には3つの種類があります。

① 後見

精神上の障害により、 物事を判断する能力が常にない方。
この方に対して、「後見人」が付きます。

② 保佐

精神上の障害により、物事を判断する能力が著しく不十分な方。
この方に対して、「保佐人」が付きます。

③ 補助

精神上の障害により、物事を理解する能力が不十分な方。
この方に対して、「補助人」が付きます。

この制度を利用するためには、以下のような手続きが必要です。

必要な手続き

①管轄の家庭裁判所に申立てをします。
 管轄の家庭裁判所とは、本人の住民票上の住所地を担当する
 家庭裁判所のことです。

②申立てをすることができる人(申立人)は、本人、配偶者、4親等内の親族
検察官、市町村長等です。

③申立の費用は、申立て人が払います。
ただし、特別の事情があるときは、本人が払うようにすることができます。

④申立てをすると、親族調査、本人調査、財産調査、必要に応じて
精神鑑定が行われます。

⑤審理が行われ、審判が出ます。

⑥申立てから審判までの期間は、およそ2~3ヶ月です。

⑦審判書が届いてから、2週間の間に誰からも反対(特別抗告といいます)が
なければ、審判が確定します。

3. 任意後見制度とは?

この制度は、代理を希望する方が、代理をする方と「任意後見契約」を結んで行うものです。
従って、この制度を利用できる方は、物事を判断する能力に間題がなく、「任意後見契約」の内容が理解できる方です。まだ、物事を判断することに問題がないうちに、開題が出てきたときに、どういうことを代わりにやってもらうかを公正証書という文書で契約をするものです。
公正証書は、公証役場という所に出向いて、公証人に作ってもらいます。

この制度にも3つの種類があります。

① 即効型

契約を結んで直ぐに、任意後見監督人を選任して契約の効力が発生するものです。

② 将来型

契約を結んで直ぐには、効力は発生しませんが、物事を判断する能力に問題が出てきたときに任意後見監督人を選任して、効力が発生するものです。

③ 移行型

生前事務委任契約(見守り契約)と任意後見契約の2つの契約を結んで、物事を理解する能力に問題が出てくる前から、財産の管理や入院手続き等の代理をしてもらい、問題が出てきたときに、任意後見監督人を選任して、任意後見契約の効力が発生するものです。また、亡くなった後のこと(死後事務委任契約)も併せて契約することもできます。

任意後見契約は、任意後見監督人が選任されることによって効力を開始します。
それまでは、任意後見契約を結んだ当事者は、委任者と任意後見受任者です。
任意後見監督人は、管轄の家庭裁判所に選任の申立てをして選任されるもので、選任まで2~3ヶ月かかります。
任意後見監督人が選任されると、委任者は成年被後見人になり、任意後見受任者は任意後見人になります。

成年後見制度は、判断能力が十分でなくなったときに利用できる制度です。
従って、身体に障害があり行動が不自由であるという理由だけでは利用できません。
また、今までの民法では準禁治産者とされていた浪費癖の方も成年後見制度の対象者ではありません。